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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第17章 Painting Of Love







「サクラさん、お一人の絵をですか?」

画家は、念を押すように繰り返した。

「ああ、そうだ」

リヴァイは横目でちらりとサクラを見てから、画家の方へと視線を戻す。

「あんたが忙しい事は承知してる。だから、当初の目的である絵を完成させてからで構わない」

もともとは、画家がサクラにモデルを頼んだことから始まった。
二人の肖像画はその見返りだったのだから、サクラの絵を描いて欲しいというリヴァイの頼みは正式な注文になる。


サクラの絵を描ける。
画家にとってこれ以上の喜びはない。
たとえ無償でも描きたいくらいだ。


「分かりました、お引き受けいたします。サロンへ出展するにはまだ時間に余裕がありますので、リヴァイ兵士長のご要望に応えてから取り組むことにします」

二つ返事で承諾した画家に、リヴァイは静かに頷いた。
そして、まだ驚いた顔をしているサクラを見る。

「サクラ、疲れてねぇか?」
「は、はい。私は大丈夫です」
「なら、お前はここに残れ」
つかつかと洋服を置いてある棚に歩み寄ると、ズボンを掴む。
「このまま俺が注文した絵を描いてもらうんだ」
「それは構いませんが・・・」
サクラは戸惑いながら、一人で身支度を整えているリヴァイに歩み寄った。
芸術に興味がないはずの彼が、自ら絵を欲しがるなんて信じられない。

「リヴァイ兵長はどうなさるのですか?」

「俺は、帰る」

リヴァイは振り返ると、はだけているサクラの胸元に目を落とし、ローブの前をしっかりと合わせた。
自分は、ここにいるべきでない。
優しくサクラの腕をさすりながら、画家の方を向く。

「あんたが“画家”だということはもう分かった。だから、ここにサクラ一人を置いていける」

「リヴァイ兵士長・・・」


「俺に構うことはねぇ・・・あんたの目に映ったままのサクラを描いてくれ」


その目にはもう、画家に対する警戒心、不信感は一切なく。
敬意すら込められた、澄んだ色をしていた。





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