【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
「おい・・・」
低い声に、イーゼルの前に座ったままの画家は恐々と顔を上げ、背後にいるリヴァイを振り返った。
「あんた、すげぇな・・・」
それは、画家にとって予想もしていなかった言葉だったのだろう。
目を丸くする。
「まだ完成してねぇが・・・見事な絵だと思う」
「あ、ありがとうございます」
「サクラもこっちに来て見てみろ」
しかし、暖炉で冷えた手を温めていたサクラは首を横に振った。
「私は遠慮しておきます。完成した時の楽しみにとっておきたいから」
「そうか・・・」
最初は絵を描いてもらうことを渋っていたリヴァイだが、今ではここに来て本当に良かったと思う。
もう一度キャンバスに視線を戻し、今度は絵の中のサクラだけをじっと見つめた。
「・・・・・・・・・」
顔の特徴を見事に捉え、本人そのままに表情が豊かだ。
まさに息遣いを感じる。
この四角い板の中に、サクラが生きているように思えた。
「なあ・・・ひとつ頼み事をしてもいいか?」
どれくらい絵を見つめていただろう。
静かな声で、唐突ともいえる願いを口にする。
「小さくていい・・・金はいくらでも出す、あんたの言い値で構わねぇから・・・」
切なげな瞳は、キャンバスに向けられたまま。
「サクラ・ブルームの絵を描いて欲しい」
そして、ゆっくりと画家の肩に手を置く。
暖炉の前のサクラが振り返った。
「あんたの目で見たままのサクラを・・・描いてもらいたい」
その時、画家は初めてリヴァイという男の心に触れたような気がした。