【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
やはり、肌の色はクリームイエローをベースに、スノウホワイトを少し。
なんと若くて瑞々しいのだろう。
「素晴らしい・・・」
思わず、画家の口から感嘆の溜め息が漏れた。
あどけなさを残す顔立ちとは正反対に、首筋から鎖骨にかけての綺麗なラインは色気を帯びている。
乳房も豊満ではないものの、ツンと上を向いて形が良い。
何より画家の目を釘付けにしたのは、鳩尾から下半身に向かってキュッと引き締まり、筋がくっきりと通った腹筋だった。
ただ細いだけではない、鍛え上げられた腰のくびれ。
まさに、人類に命を捧げた兵士の努力の結晶だ。
“ きっと・・・ガッカリさせてしまうと思います ”
モデルを頼んだ時、そう不安がっていたサクラ。
確かに丸く肉感のある女性が魅力的とされる、この世界の美的感覚からは外れるかもしれない。
それでも・・・
画家はとても美しいと思った。
そして自分の間違いに気がつく。
彼女をモデルにして描くべきは、天使ではない。
「貴方は、この世界を護る女神だ」
画家は壁を崇めるウォール教の信者ではない。
だが、巨人の脅威から人類を護っている壁は、絶対的な存在として認識している。
ウォール・マリア
ウォール・ローゼ
ウォール・シーナ
三人の女神・・・彼女らが具現化すれば、きっとサクラのような姿なのではないか。
女性らしさを限界まで捨てた身体。
しかし、男性のそれとは違い、確かに母性を残している。
人類のために剣を持ち、戦う聖女。
その彼女をまるで壊れやすい硝子細工のように優しく抱き寄せる、強靭な肉体。
防壁の女神と、最強の兵士・・・
二人寄り添う姿は、強くも儚いものだった。
「ありがとう・・・貴方達を描けることに感謝します・・・」
たとえこれが公けには評価されない、個人的な絵だとしても。
名声には結びつかないが、この経験は財産となるだろう。
声を震わせて礼を口にした画家に、リヴァイは首を傾げた。
「まだ何もしてねぇのに、何言ってる」
しかし、その口調にはもう刺々しさがない。
「お前の目に俺達がどう映ってんのかは知らねぇが・・・まあ、好きなように描いてくれ」
そう言ってサクラの頬を両手で包むと、そっとキスをした。