【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
「すいません、つい・・・」
画家が謝ると、リヴァイはサクラが用意をしている別室の方をちらりと見た。
「いいか・・・俺はお前が“画家”だから、サクラの裸を見せることを許した。だが・・・」
青みがかった三白眼をゆっくりと画家に向け、威圧感たっぷりに見据える。
「少しでも“男”としてあいつの体を見た時は・・・その場でお前の両目を抉る」
それは、冗談で言っている言葉では無かった。
一瞬でも邪な気持ちを持ってサクラを見たら、画家の命とも言える目を潰し、光を奪う。
その術はいくらでも心得ているし、躊躇するような男ではない。
凍りつくような視線を前に、画家は恐怖を感じて生唾を飲み込んだ。
「わ・・・私も芸術家の端くれです。そのようなことは決して!」
「ならいい」
そうだ。
自分は確かにサクラを愛している。
しかし、彼女にモデルを頼んだのは、彼女を描きたいと思ったのは、“画家”としてそう願ったから。
この古びたアトリエにおいて、自分とサクラの関係は、画家とモデル。
それ以上でも、それ以下でもない。
積み上げられたクッションの埃を、神経質そうに手で払うリヴァイを見ながら、画家はいたたまれない気持ちになった。
しかし、それもすぐにかき消されることになる。
「お待たせしました」
部屋のドアが開き、真っ白なローブを羽織ったサクラが入ってきた。
髪を片側に流し、健康的なうなじが覗いている。
その下はもう何も身につけていないのだろう。
少し恥ずかしそうに胸元を手で押さえていた。
「あれ、リヴァイ兵長はもう準備万端なんですね」
「準備も何も、ただ脱ぐだけじゃねぇか」
「あはは、そうですね」
張り詰めた空気を一瞬で和らげるような笑顔に、画家も、リヴァイも、自然とその表情を緩める。
「それでは、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げるサクラに、画家も慌てて頭を下げた。
まずは二人の肖像画を書いてから、当初の目的であるサクラの絵を描くことになっていた。