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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第17章 Painting Of Love








約束の日。

画家はアトリエに白い布を敷き詰め、モデルを受け入れる準備に大忙しだった。
キャンバスに画布を張り、高価な絵の具を箱に並べる。
筆も新しいものを調達しておいた。

「・・・これでいいのだろうか・・・」

どれだけ準備しても不安で仕方ない。
絵の具の色は足りるだろうか。
彼女の肌を忠実に表す色は揃っているだろうか。

この日のために、新たな絵の注文はなるべく断ってきた。
サクラを描くことに集中したい。
余計なことに気を取られたくなかった。

「よし・・・こんなものか」

あとはサクラを待つだけ。
その時だった。


「ごめんください」

時間ちょうどに、アトリエのドアをノックする音が響く。
画家は階段を駆け下り、サクラを招き入れた。
そして、もう一人。

「わざわざありがとうございます・・・リヴァイ兵士長」

にこやかなサクラの後ろに、リヴァイが渋い顔で立っている。
二人とも今日は非番なのか窮屈な兵服ではなく、淡い色のカットソーに黒いパンツ姿だった。

「ごめんなさい、無理を言ってしまって」

「いいえ、最初にサクラさんにお願いしたのはこちらですから・・・」


天使のモデルを引き受ける代わりに、サクラが画家に伝えた願い。


“ リヴァイ兵長と私の絵を描いてくれませんか? ”


自分の生きた証を残したいわけではない。
彼と愛し合った事実を残したい。


それは画家にとって残酷な願いだった。
しかし、不安そうに俯きながらそれを口にしたサクラを見たら拒めなかった。

画家が引き受けると言った時、サクラは心から嬉しそうに微笑んだ。
どうしようもなく惹かれると同時に・・・


自分の想いが決して彼女に届くことはないということを、神に宣告されたような気分だった。





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