【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
しばらく考え込んでいたサクラが、おずおずと口を開く。
「あの・・・私、女性的な体をしていませんよ」
「え・・・?」
「体に傷もありますし・・・」
ドクンドクンと、画家の胸が高鳴り始めた。
もしかして・・・奇跡が起ころうとしているのか・・・?
「きっと・・・ガッカリさせてしまうと思います」
「そ・・・そんなことありません! 決して! 貴方は、私のイメージにピッタリなんです」
この人を描けるなら、全てを失っても構わない。
「貴方は私の理想の女性です。まさに天使に相応しい」
「・・・・・・・・・・・・・・」
理想というより、唯一の人だ。
もうサクラ以外に考えられない。
「お願いします・・・!」
熱のこもった画家の瞳に押されるようにして、サクラは小さく頷いた。
「・・・それなら・・・」
少し冷たいが、優しい風が二人の間に吹く。
「・・・ お引き受けします」
その返事に、今度は画家の瞳が丸くなった。
「・・・いいのですか・・・? 私の目の前で裸にならなければならないのですよ」
「はい・・・でも、ひとつだけ、お願いがあるんです」
「モデルを引き受けてくださるのなら、どのような条件でも!」
「条件・・・というわけではないのですが・・・」
艶やかな唇が動く。
「ーーーーーーーーーー」
サクラの願いを聞いた瞬間、画家はナイフでちくりと刺されたような痛みを心臓に感じた。
「あの・・・無理だったら構わないのですが・・・」
しかし、拒むわけにはいかない。
ずっと陰からその姿を描いてきた、憧れの女性。
その人が今、自分の目の前でポーズをとってくれると約束してくれるんだ。
その“願い”さえ叶えれば・・・
「わかりました。貴方がモデルになってくださるのであれば、私はなんでもいたします」
そう答えた瞬間に見せた、サクラの笑顔。
やはりどうしようもなく愛しく・・・
世界はなんと残酷なのだろうかと思わずにはいられなかった。