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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第17章 Painting Of Love





リヴァイが去ってから、サクラは他に見学してみたい場所はあるかと尋ねた。
しかし、画家は首を横に振る。

「もうじゅうぶん案内していただきました。これ以上サクラさんのお時間を取らせるわけにはいきません」
「そうですか。なら、門まで送ります」

「あの・・・でも、ひとつだけ頼みがあるのですが・・・」

言いにくそうに吃りながら、サクラの顔を見て頬を赤くする。

「なんでしょう? 私にできることならば何でも」

「しかし・・・会ったばかりでこんなことを頼むなんて、不躾だと思われるでしょうが・・・」

いや、むしろ嫌われるかもしれない。
気味が悪いと罵られるかもしれない。

だけど、これまでの人生で一番の勇気を振り絞って口に出した。


「モデルになっていただけないでしょうか」


「え・・・?」


それはまったく予想していなかった要求だったのだろう。
サクラの瞳が、驚きで丸くなる。


「実は・・・今・・・サロンに出展する絵を制作しなければならないのですが・・・」


サロンとは、ウォール・シーナで行われる公的展覧会のこと。
ここで認められれば、芸術家としての地位が確立する。


「天使をモチーフにしようと考えているのですが・・・ぜひ貴方をモデルに描きたいのです」

「私・・・なんかでいいんですか? もっと適役がいるのでは・・・」

「いえ、貴方しかいません。貴方ほど純粋で、穢れのない微笑みは見たことがない」

その熱意に、サクラは少し恥ずかしそうに俯いた。

「ただ・・・裸婦像なので・・・裸になってもらわなければなりませんが・・・」

「それは・・・ちょっと・・・」

流石に戸惑いの色が顔に浮かぶ。


それはそうだ・・・

裸婦モデルをしてくれるような女性は滅多にいない。
画家はいつもその役目を娼婦に頼んでいた。

誇り高き兵士が、引き受けてくれようはずがない・・・


やはり無理な願いだったと諦めかけた時だった。



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