【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
「それはぜひ見てみたい。私は花には詳しくないですが、貴方が育てるものはどれも美しいんでしょうね」
「私はただ花に好かれたいだけです。花達は、その人のために咲きたいと思った時、何もなくても咲くものなんですよ」
薄紫の花びらをそっと撫でて、優しく微笑む。
ああ、こんな女性だから花もそれに応えるのだろう。
「本当に花がお好きなんですね。今でもじゅうぶん好かれているのが伺えます」
「きっと母の影響です。母はもっと植物に愛された人でした」
過去形として語るのは、その人はもう存在しないということか。
でも、サクラから悲しみは見受けられなかった。
「花が咲くと母がそばで笑っているような気がするんです。だからかな、勝手に花壇の手入れをしてしまうのは」
小さい頃、悲しいことがあると母が育てた花壇の中でじっとしていた。
今でも心を落ち着かせてくれる場所だ。
「サクラさん・・・」
どうしていまここに絵の具がないんだ。
こんなに残したいものが目の前にあるというのに。
「貴方は本当に幸せそうに微笑みますね」
きっと壁外では目を覆いたくなるような残酷な光景を見ているはず。
それなのに、ここまで純粋さを保っていられるのは何故なのか。
サクラは花壇の前で屈んだまま、画家を見上げた。
少し驚いたような表情をしていたが、すぐにまた口元に笑みを浮かべる。
「はい・・・実は今、とても幸せなんです」
花が咲いているから?
・・・いや、きっと違う。
“何故、貴方は幸せなのですか”
それを聞いていいものかどうか、迷っている時だった。