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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第17章 Painting Of Love





それは季節が変わり、寒さの増したある日のこと。

画家は完成したある作品を届けに調査兵団へやってきた。
今度の客は、若い兵士。
年が近いこともあり、デッサンをしている最中に意気投合していた。


「ところで、兵士で花の手入れをしていらっしゃる方がいますよね」


依頼品を手渡しながらさりげなく切り出すと、兵士は首を少し傾げて考え込んだ。
調査兵団では、植物の世話をする係りは特に決まっていない。
しかし、心当たりがあったのか、ポンッと手を叩く。

「ああ、それって東洋人のような顔立ちをした兵士のことか?」
「そうです、そうです。彼女の名前は何というのですか?」

寡黙な画家が、いつになく饒舌なことに軽く驚きを覚えつつも、兵士はその名前を口にした。


「俺と同じ第二分隊所属のサクラ・ブルームだ」

「サクラ・ブルーム・・・」


声に出したのは一度だが、心の中でその名を繰り返し唱える。

「サクラなら立体機動の訓練中だろう。興味があるならば見学していくか?」

“興味”の対象がサクラなのか、立体機動なのか、あえてそれには触れず意味深に微笑んだ。

「良いのですか?」

「絵は、支払った金以上の出来栄えだったからな。それぐらいはさせてくれ」

そう言って、画家を兵舎の裏手にある立体機動の訓練場へと案内した。



兵士に案内されるがままに訓練場という名の“林”へやってくると、画家は驚愕のあまり声を失った。

腰に付けた器具から発射されるワイヤーを駆使し、一瞬にして地面から舞い上がる兵士達。

重力に逆らい、自由に飛び回るかのごとく木々の間を移動する。

「すごい・・・」

初めて兵士の訓練を見た画家は驚きを隠せなかった。
とても人間業とは思えない。

優れた身体能力、
安定した三半規管がなければなし得ないだろう。
懸垂すらまともにできないひ弱な彼にとって、兵士達が曲芸師のように思えた。

これが、調査兵団。
巨人が支配する世界に入り、生きて帰ることができる人間の集団なのか。




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