【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
画家は驚いた。
自分のところにやって来る兵士は皆、死を受け入れているせいか、どこか諦めたような顔をしている。
明日死ぬかもしれないのに、植物の命になど構っていられない。
そんな雰囲気を醸し出していた。
だが、その女兵士は手を土で汚し、丁寧に手入れをしている。
その目は優しく、微笑みを携えたその顔は慈しみ深い。
とても、とても美しい人だと思った。
その瞬間から画家の心は、彼女に奪われた。
どうしてもその姿を描き、永遠に残したい。
そう願ってやまなかった。
しかし、残念ながら彼と彼女を繋ぐものは何もない。
それからというもの、画家は壁外調査のたびにトロスト区の前門へ赴き、出立する彼女を見送った。
馬に跨り、開門を待つ姿。
凛としているが、どこか興奮しているようにも見える。
これから足を踏み入れる地への恐れと、期待が入り混じっているようだった。
もしかしたら、これが最後の姿かもしれない。
画家は紙に必死で木炭を滑らせ続けた。
その姿を描き留めるために。
世間は皆、エルヴィン・スミス団長、リヴァイ兵士長に目を奪われる中、画家はただひたすらにその女兵士の姿を描いていた。
その女兵士の名がサクラ・ブルームと知ったのは、彼女を知ってから数カ月たってのこと。