• テキストサイズ

【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第17章 Painting Of Love





画家が彼女を知ったのは、調査兵団の兵舎だった。


近頃、調査兵の間で肖像画を作ることがブームとなっていた。

明日には死ぬかもしれない身。
自分が生きた証として、その姿を形に残しておきたいと考える者が多いからだろう。
しかし、兵士の薄給では、とても一流の画家に肖像画を頼むことはできない。

そんな中、この画家は腕は確かだが、若かった。

美術界においては、実力よりも実績で作品の価値が決まる。
実績の乏しい画家の絵は安かった。

手頃な値段で自分の姿を残しておけると、兵士達はこぞって自分の姿を彼に描かせた。

絵の大きさにもよるが、大抵はアトリエでデッサンをし、客が帰った後で完成させる。
そして、完成したものを取りに来てもらうか、客の所まで届けるか、のどちらかだった。


その日、班長クラスの兵士の肖像画を納品するため、画家は調査兵団兵舎を訪れていた。

外部者にとって、同じ建物が並ぶ兵舎は分かりにくい。
指定された第二兵舎が分からず、大きな包みを持っているせいで滝のような汗を流しながら、中庭へ迷い込んだ時だった。


ふと、画家の足が止まる。

一人の女兵士が、花壇の前で屈んでいるのが目にとまった。
水を張ったバケツを横に置き、ジョウロで花に水をやっている。





/ 781ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp