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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第17章 Painting Of Love





太陽が西に沈み、赤く燃える頃。
開門を知らせる鐘がトロスト区に鳴り響く。

「またずいぶんと人数が減ったもんだな」

「税金の無駄遣いをしやがって」

壁の向こうから凱旋する調査兵団に対する民衆の目は、決して温かいものではない。
しかし、未知の世界から戻ってくる兵士達はどんな表情をしているのかと、好奇心から大通りに人が群がった。

そんな中、一人の男が急ぎ足で通りの向こうからやってくる。
年の頃は23だろうか。
無精髭に、栗色の髪はボサボサ。
不摂生からか、艶のない皮膚に覆われた体は痩せこけていた。

彼は人混みを掻き分け、ノロノロと列をなす兵士達に祈るような目を向ける。

誰も皆、傷つき、疲労困憊していた。


どこにいる?
どうか、無事でいてほしい。


今にも心臓が張り裂けそうになりながら、乾いた絵の具がついた手を握りしめた。


「・・・あ・・・」


想いは通じたのか。
生気を失った数十の兵士の間に、その姿を見つける。

激戦を物語るようにその頬は泥で汚れ、右手にはドス黒い血がこびりついていた。
腰に下げた左右のケースには、予備の刃が一本ずつしか残っていない。

それでも・・・

今回も生きて、戻ってきてくれた。


彼はまるで腰が抜けたようにヘナヘナとその場に座り込んだ。


「良かった・・・ありがとう・・・」


誰に対するわけでもない、感謝の言葉。
ただ“彼女”が無事だったことに安堵し、口を衝いて出た言葉だった。



男は、画家。
彼女は、調査兵団所属の兵士。

二人は、一度も言葉を交わしたことは無かった。

彼女は画家の存在を知らない。
しかし、画家の心にはいつも彼女の笑顔があった。






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