【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第3章 Seize the Light
その日の夜、調査兵団は無事にウォール・ローゼへの帰還を果たした。
捕獲した巨人は長い時間日光に晒されなかったおかげで動きが鈍く、大型のテントで隠しながら移動したので、街がパニックになることもなかった。
しかし、市民の調査兵団に対する態度は、サクラにとって想像以上に厳しいものだった。
今回も大勢の死人を出したから、作戦は成功しているのにねぎらいの言葉は皆無。
それでも調査兵は冷たい視線に耐え、市民のために命を投げ出す。
今、ここで足を止めてしまったら、人類は希望を無くしてしまうから。
サクラは道の両側から心無い言葉が聞こえてきても、堂々と前を向いて歩いた。
仲間の死は、無駄じゃない。
仲間を死から救えなかったことは、恥ずべきことじゃない。
私達は、間違った事をしていない。
そうやって胸を張っていないと、今にも涙が零れそうだった。
深夜、一団が本部に到着するとエルヴィンは広場に兵士を集め、酒と食料を振る舞った。
酒を飲んだことのないサクラにもグラスを渡される。
これは弔い酒だと言われた。
明日には上官達が遺族に死亡通知を直接届け、引き取りを希望した者には遺体を渡す。
そして、身寄りのない者、“行方不明”として処理され遺体の無い者は軍葬となる。
僅かな灯りしか灯されていない広場からすすり泣く声が上がった。
どんなベテランの調査兵だとしても、別れはつらい。
だからこうして、新しい朝が訪れるまでは涙を流すのか。
「・・・・・・フリーダ・・・みんな・・・・・・」
サクラは広場の片隅に座って、リヴァイが渡してくれた腕章をポケットから取り出した。
一つ一つの名前を見るたび、訓練兵団にいた頃の記憶が蘇る。
辛かったけれど・・・楽しかった日々。
優秀なロゼやフリーダに置いていかれないよう、必死だった・・・
自分が調査兵になると言った時、二人は一緒になってやめた方が良いって言っていたっけ。
サクラは絶対に早死にするよ、って。
「あはは・・・ほんと・・・その言葉、そっくり返してあげたい」
上半分しか残されていないフリーダの紋章に向かって呟いた。