【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第16章 Light A Fire In The Heart ※
「・・・嫉妬・・・? これが・・・?」
初めての事に、あまり実感が湧かない。
しかし、それ以外にこの感情を表現する言葉は見当たらなかった。
「人間なら当たり前の感情だ。俺もよくお前にぶつけてるだろ」
そして小さくため息を吐くと、背後の大通りを親指で差した。
「馬車を呼んでくる。兵舎に帰るぞ・・・話はそれからだ」
「帰る・・・?」
「ああ。ここにいたって仕方ねぇし、話もできねぇだろ」
とりあえず、一旦兵舎に戻ってからサクラが安心するまで話をしよう。
そのつもりだったのだが・・・
「嫌です」
サクラはリヴァイの手首を強く掴み、顔をしかめた。
「帰りたくありません」
「オイ、何言ってる。帰らねぇで野宿でもするつもりか」
「泊まる場所なら、あるではありませんか」
ちらりと背後の古びた建物に目をやる。
そこは、先ほどまで玄関口に馬車が停まっていた、低俗な場所。
「お前・・・何考えてやがる・・・」
「待合宿に泊まりましょう、リヴァイ兵長」
有無を言わせない、据わった目。
初めて見せるサクラの表情に、リヴァイはどう反応して良いものか分からなかった。
しかし、心底惚れている女の誘いを拒む理由はどこにも無い。
「仕方ねぇな・・・」
一個旅団並みの戦力を誇る、人類最強の兵士。
人気と期待を一身に受けるリヴァイは、たった一人の少女の力に抗うこともできず、似つかわしくないその場所に引き摺り込まれるようにして入って行った。