【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第16章 Light A Fire In The Heart ※
すると、それまで押し黙っていたエルヴィンが口を開いた。
「ロゼ、先に馬車に乗っていてくれないか。私は部下に話がある」
全ての感情を隠す、落ち着いた声。
ロゼはエルヴィンの方を振り返り、じっと綺麗な瞳を向けた。
「それは、私に対する命令でしょうか」
「いや。君が私の命令に従うならばそうしただろう。だが、そうでない以上、私は君に懇願するより他はない」
「・・・・・・・・・・・・」
懇願しているようにはまるで見えないエルヴィン。
だが、命令しているような口ぶりでもなかった。
ロゼはしばらくエルヴィンを見ていたが、ふと微笑み、リヴァイに向かって軽く会釈をする。
「リヴァイ兵士長、失礼します」
「・・・・・・・・・・・・」
リヴァイは忌々しそうに舌打ちしただけで、何も答えなかった。
そんな反応は承知の上だったのだろう、ロゼは特に意に介した様子もなく、今度はサクラの方へ視線を移す。
「・・・・・・・・」
じっと顔を見つめ、何かを言いたげに口を開きかけた。
しかし、なぜか伝えるのを諦めると、首を横に振る。
「じゃあね、サクラ・・・」
それは、リヴァイやエルヴィンに対するものとまったく違う、優しい声。
でも、どこか悲しげだった。
こんな形でも、会えて良かった。
どうか、死なないで。
どうか・・・エルヴィンに殺されないで。
ロゼの想いは、言葉にされないまま。
サクラに届くはずもなく、夜空の中に消えていく。
「ロゼ!」
ほんの一瞬。
馬車に乗り込む寸前に見せた苦痛の表情を、サクラは見逃さなかった。
ドクンと心臓が脈打つ。
自分の親友は何かを抱えている。
いつからなのか分からないが、相当根深いものだろう。
しかし、それが何かを問いかける前に、ロゼは馬車の中に入ってしまった。