【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第16章 Light A Fire In The Heart ※
星空の下を、寄り添いながらしばらく歩いていた時だった。
「兵長」
「なんだ?」
ふいにサクラが足を止め、暗い路地の奥を指差す。
そこは売春宿が並ぶ場所だった。
「あれ・・・」
体を強張らせ、じっと見つめる視線の向こう。
リヴァイもそちらに目を向けた瞬間、心臓が大きく脈打った。
たった今、彼の話をしていたからというのか。
あまりの衝撃に、二人とも言葉を失う。
狭い路地の脇に、窮屈そうに停められた馬車。
その向かいにある入り口の看板には、“待合宿”の文字。
「・・・・・・・・・・・・」
宿から出てきたのは、低俗なその場に似合わない金髪の精悍な男だった。
「エルヴィン・・・!」
なんという偶然なのだろう。
しかし、リヴァイは驚きよりも、怒りの混じった目をしながら彼の名を呟いた。
そして、エルヴィンのあとに続いて宿から出てきた少女。
外出用のマントを被っているが、兵士だということが分かる。
背中のエンブレムは・・・憲兵団。
フードの合間からチラリとしか見えないが、美しい顔立ちをしていることが遠目でも見て取れた。
「う・・・そ・・・」
“ サクラ、知ってる? ”
数日前、同期と交わした会話を思い出す。
“ 団長、最近かなり頻繁に待合宿に通っているみたいよ ”
にわかには信じられない噂だった。
こうして調査兵団団長が待合宿から出てきた姿を、実際に目の当たりにしても信じられない。
“ しかも、いつも同じ女性兵士と一緒みたい ”
馬車に乗り込もうとしている少女の顔がハッキリと見えた瞬間、さらなる驚愕のあまり叫んだ。
「ロゼ!!」
その声に、情事を終えたばかりだろう二人は、ゆっくりとこちらを振り返る。
そしてリヴァイとサクラに気がつき・・・
まるで時が止まったように、世界が凍りついた。