【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第16章 Light A Fire In The Heart ※
もともと芝居には興味がなかったにしろ・・・
豪華絢爛の舞台に、きらびやかな衣装。
貴族好みなのだろうか、現実離れした悲恋のストーリーには胸糞が悪くなった。
その大道具や小道具を作るため、その衣装を仕立てるため、どれだけ人民の血税が使われたのか。
巨人に立ち向かうべく、調査兵団が壁外で実際に命を落としている中、両親に認められない仲だからといってこれ見よがしに心中するような恋人達の姿のどこが感動的なのか。
貴族の豚どもが悦ぶ娯楽には、吐き気がする。
劇の後半は苛立ちを堪える事の方に専念していたリヴァイは、隣を歩くサクラに目を向けた。
髪を結い、兵服ではなく、柔らかなブラウスにロングスカート姿。
質素だが派手に着飾っている女より遥かに良いと思った。
「オイ」
劇場を出て北に向かって大通りを歩いていると、リヴァイが少し不満そうに声をかけた。
「なぜ離れて歩く?」
「え?」
二人は並んで歩いているものの、間には二人分のスペースが空いている。
先ほどからずっとそうだった。
芝居の前に早めの夕食を取っている時も、劇場の中でも、サクラはリヴァイと一定の距離を保っていた。
「お前、俺と歩くのが嫌なのか」
「い、いえ! そんなことありません」
「なら何で離れて歩くんだ。さっきから知らねぇ奴に間を通られてくじゃねぇか」
何で、と聞かれても困ってしまう。
リヴァイが納得のいく返答ができるか分からなかったが、おずおずと口を開いた。