【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第16章 Light A Fire In The Heart ※
時をほぼ同じくして、団長室ではリヴァイが書類の整理を手伝っていた。
「芝居?」
初めて聞いた単語だとばかりに反復し、眉間に深いシワを刻む。
「ああ。芝居のチケットを二枚やろう。しかも、特等席だ」
微笑んでいるエルヴィンの手には、飾り文字で演目のタイトルが書かれた紙切れが二枚。
あまりにも唐突に差し出されたので、反射的に受け取りかけたものの、それが芝居のチケットだと聞いて出した手を引っ込めた。
「興味ない」
「そう言うな。案外面白いかもしれないぞ」
「役者がバカみてぇに騒いでるのを見て、面白いわけがねぇ」
そっぽを向くリヴァイに、エルヴィンはやれやれと肩をすくめた。
賭け事や女遊びをしないばかりか、大衆向け娯楽にも関心が無いとは。
「しかし、チケットを“上”から貰ってしまった手前、捨てるわけにはいかないだろう」
エルヴィンの言う“上”とは、調査兵団の支持母体のこと。
強力な資金源の機嫌を損なうわけにはいかない。
「残念ながらこの日は都合が悪い。リヴァイ、俺の代わりに行ってくれ」
「あ? そりゃ命令か?」
「そうだと言ったら?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
リヴァイはちらりとチケットを見た。
そこに印刷されている日付は、特に何かあるような日ではない。
内地からの召喚ならば話は別として、それ以外ならエルヴィンだったらいくらでも都合がつくだろう。
なのに、何故・・・
その瞬間、リヴァイの脳裏にある女性の姿がちらついた。
「お前・・・まさか、あの女と会うんじゃねぇだろうな」
チケットを持っているエルヴィンの手がピクリと動く。
「・・・だとしたら?」
「だとしたら、お前は俺が思っていたよりも、遥かに馬鹿な男だったということだ」
「はは・・・手厳しいな、リヴァイ」
相変わらず微笑んでいるものの、目元は笑っていない。
そんなエルヴィンに、リヴァイは苛立った。