【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第16章 Light A Fire In The Heart ※
「みんな噂しているよ。サクラが上官の誰かと付き合ってるんじゃないか、って・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「それに、あまり恋愛話をしたがらないよね。噂になったら困るような人が彼氏だからじゃないの?」
確かに・・・仲間内でそのような話になると、さりげなく話題を変えるか、その場から去るようにしている。
でもあれだけ頻繁にリヴァイの部屋に通っているのだから、疑われても仕方がない。
・・・少しは控えなければ。
「・・・ハ・・・ハンジ分隊長のお手伝いをしているだけだよ。いつも作業場にそのまま泊まっているの」
「へえ。じゃあ、分隊長がお相手ってわけ?」
「違う! いろいろ忙しいんだよ」
苦しい言い訳だった。
しかも、嘘までついてしまうなんて・・・
ごめんなさい、分隊長・・・
でも、リヴァイの部屋に泊まっているなんて言えない。
特別作戦班に指名されるような精鋭ならまだしも、下級兵士である自分は本来、兵士長とは顔を合わせる機会すらほとんどない下っ端だ。
「ふーん・・・」
同期はパンをかじりながらサクラを見つめていたが、ふいにため息をついた。
「じゃあ・・・やっぱりサクラじゃないのか。でもそうしたら、いったい誰なんだろう」
「団長に選ばれるぐらいだから、よほど優秀な兵士なんだろうね」
団長は独身だと聞いているが、容姿端麗、頭脳明晰な人だから恋人がいてもおかしくはない。
なのに、なぜ待合宿なんかで逢瀬を重ねる必要があるのか。
何かよほどの事情があるのだろうか・・・
団長の穏やかな微笑を思い出し、切なくなった。
エルヴィンのことは心から尊敬している。
彼に命じられれば、この命を捨ててもいい。
何より、リヴァイが絶対的に信頼している人だ。
その団長が、人目を憚りながら愛する女性と会わなければならないなんて・・・
そう思うだけで、ただただ胸が苦しくなった。