【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第16章 Light A Fire In The Heart ※
その噂を知ったのは、ある日の夕食でのことだった。
「サクラ、知ってる?」
隣の席で食事をしていた同期が、声を潜めて切り出した。
「なにを?」
「エルヴィン団長のこと」
そんなに周囲を気にしなければいけない話なのだろうか。
少し怖いような気持ちになりながら、同期の方へ耳を傾ける。
「団長、最近かなり頻繁に待合宿に通っているみたいよ」
「待合宿・・・? 団長が?」
それはあまりにも唐突で、にわかには信じられない。
待合宿とは、売春婦を呼んで泊まる宿のこと。
要は性行為を楽しむためだけの場所だ。
低俗で、調査兵団実行部隊トップのエルヴィンには似つかわしくない。
「しかも、いつも同じ女性兵士と一緒みたい」
そこまで言うと、意味深な瞳をサクラに向けてきた。
「・・・まさか、サクラじゃないよね?」
「は?」
なぜ、そこに自分の名前が出てくるのか。
サクラはわけが分からず、マジマジと同期の顔を見つめた。
「私が団長と待合宿に行くわけないでしょ。まだ私が団長のことを好きだと勘違いしているの?」
「だって・・・最近よく上官用の居住棟に行っているじゃない。しかも帰ってくるのは朝だし・・・」
ほとんど確信を持っているような視線に、ドキリと心臓が鳴った。