【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第15章 A Lullaby In My Heart
「・・・もう接触の許可が下りてる時間だろ? 行かねぇのか、地下」
心ここに在らずといった風のエルヴィンを怪訝そうに見つめながら、リヴァイは床を指差した。
「話をしなければならねぇんだろ、そのエレンって化け物と」
「・・・あ、ああ」
リヴァイ。
お前の信頼は失ったと思っていた。
なのに、お前は“まだ”俺を信じると言ってくれるのか。
お前は俺を・・・
「エルヴィン」
ドアに手をかけながらリヴァイは呟いた。
「今、何を考えてる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
振り返り、向けられる冷たい三白眼。
「お前は間違ったことをしてない。これまでも、そしてこれからもだ」
「リヴァイ・・・」
「俺は巨人をこの世から絶滅させることができりゃいい。そのエレンとかいうガキも始末しなきゃならねぇんならする」
だが、今はそいつが俺達には必要なんだろ?
言葉にしないものの、瞳がそう語っている。
エルヴィンはようやく笑みを取り戻し、そして強く頷いた。
「ああ、そうだ。だから、彼の意志を問う必要がある」
書類に添えられていた、紐のついた鍵を懐にしまう。
この鍵が、この先の世界を大きく変えることになるかもしれない。
そう考えると、ズシリと重く感じた。
地下へと続く階段。
少し前を歩くリヴァイの背中はどこか儚い。
初めて会った時は、刹那的に生きている男だった。
この世界に何も興味を持たず、憎しみすら抱いていた。
しかし、この世界の美しさを知って、愛するようになった。
刹那的に生きていた男が、永遠を求めるようになった。
リヴァイは知っているのだろう。
この世界を美しいままにしておくためには、信念を貫き通すより他はないと。
その手を巨人以外の血で汚す必要もあると。
すべては愛する者のために・・・
二人は言葉を交わさないまま、地下へと辿り着いた。