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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第15章 A Lullaby In My Heart











「エレン・イェーガー?」


審議所の一室で、リヴァイは険しい顔をしながらその名を呟いた。
すると、エルヴィンは少し意外そうに見つめる。


「あの巨人に変身する少年の名だ。心当たりでもあるのか、リヴァイ?」


団長の手には、巨人に変身するという人知を超えた存在に関する調査書類。
経歴から交友関係まで詳細に調べ上げたものだ。

「あるわけねぇだろ。そんな気味悪いガキなんか」

リヴァイは冷めた紅茶を飲み干し、顔をしかめた。
上等な葉を使っているはずなのに、不味い。
ペトラが淹れてくれる紅茶に飲み慣れているせいか、それともシーナの空気が合わないせいなのか。

「巨人に変身する人間が現れるとは・・・世も末だな」

大きな岩を持ち上げて、トロスト区の門に空いた穴を塞いだと聞くが・・・
自分が駆けつけた時にはすでに人間に戻っていたし、にわかには信じられない話だ。

「まず、信用ならねぇ」
吐き捨てるように言ったリヴァイに、書類に目を走らせていたエルヴィンが青くて深い瞳を向けた。
「俺はそうは思わない。むしろ現れたことを喜ぶべき存在だと思っている」
「・・・お前も似たようなもんだからな」
意味もないリヴァイの毒突きに、エルヴィンは笑う。
それを見て、苛立った。

まったく、こいつの考えていることは理解できねぇ。
巨人のガキを調査兵団に入れる?
巨人を始末するのが仕事のくせに、そいつらとお友達になれってのか。

バカげてる。
だが・・・


「お前がそのガキを仲間にすべきと考えるなら、俺は従うまでだ」


リヴァイが抑揚の無い声でそう言った途端、エルヴィンから笑みが消えた。

窓から差し込む夕日が、黒髪と白い肌を赤く染める。


「エルヴィン・・・俺はお前の判断を信じてるからな」


普段は達弁なエルヴィンが、言葉を失う。

「・・・・・・・・・」

複雑な顔を見せ、リヴァイから目を逸らした。

調査兵団の団長に・・・否、兵士になってからというもの、後悔すべき事は多々あった。
しかし、それを振り返らないようにしてきた。
そうしなければ、前へ進むことができなかったからだ。


だけど、たった一つだけ・・・

リヴァイの顔を見ると、どうしても思い出さずにはいられない光景がある。

後悔せずにはいられない選択を、振り返ってしまう。




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