【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第14章 Blow-job and Heart-job ※
リヴァイの執務室に響く、ペンを走らせる音。
流石に何時間も書き物をしていると、書類を破り捨てたい衝動にかられる。
「チッ・・・」
王政府に提出する“稟議書”の控えを作成しろと、団長殿から命じられた。
エルヴィンの端正な文字の羅列を、リヴァイの神経質な文字がなぞっていく。
・・・なぜ、俺がこんなことをしなければならねぇ。
眉間にシワを寄せながらペンを置くと、天井を仰いだ。
すると、ドアをノックする音がする。
お、ちょうどいい・・・ペトラが紅茶を持ってきたか?
もし、追加書類を持ったエルヴィンだったらぶっ飛ばしてやる。
「入れ」
しかし、ドアを開けたのはそのどちらでもなかった。
「失礼します、兵長」
そのどちらよりも嬉しい来訪者だった。
「サクラ」
リヴァイの眉間に深く刻まれたシワが消える。
ペンだこで痛む手も忘れ、目を優しく細めた。
「今日はずっとこちらでお仕事されていますね。お疲れでしょう」
「ああ、一息つきたいと思っていたところだ」
リヴァイの机にはたくさんの書類があるが、ティーカップは無い。
「だったら私、お茶を淹れてきます」
「いや、いい。ここへ来い」
来たばかりなんだ。
茶などどうでもいい、一緒にいたい。
「はい」
そばに寄るものの、リヴァイからはまだ張り詰めた空気がする。
しかも、これからやろうとしていることをしたら、余計に機嫌を損なわせてしまうかもしれない。
「・・・・・・・・・・・・」
頭では何度も練習してきたが、実際に本人を目の前にすると緊張してしまう。
無言のまま背後に立ったサクラを、リヴァイは怪訝そうに見上げた。
「どうした?」
少し青みがかった三白眼。
見つめられると心臓を射抜かれそうだ。
一度深呼吸し、洋服の上からでも分かる引き締まった背中を後ろから抱きしめた。
「・・・どうした」
今度は、優しい声。
右手で側頭部を撫でられる。
ああ・・・そう、これだ。
さっきのゲルガーと全く違う、愛情が込められた手。
ホッとする反面、胸が苦しくなる。