【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第14章 Blow-job and Heart-job ※
もともと威圧的な男ではあったが、近頃のリヴァイは輪をかけて近寄り難い。
部下に八つ当たりをするわけでも、怒声を撒き散らしているわけでもない。
しかし、体中に逆鱗があるのではないかと思うほど、張り詰めた空気をまとっていた。
「サクラちゃん」
日々の業務が終わり、廊下を歩いているとゲルガーに呼び止められた。
直接関わることは少ないものの、ミケ班所属の主力として仲間から厚い信頼を集めている。
しかも隣にはナナバの姿もあり、サクラは丁重に頭を下げた。
「ちょっと話せる?」
そう言って、使われていない会議室を指差す。
この後はハンジの作業場に顔を出そうと思っていたのだが、断る理由もないので頷いた。
「ささ、入って」
ゲルガーとナナバに通された部屋は埃っぽく、薄暗い。
どうしてこんなところに?
内密な話なのだろうか。
「あの・・・話って?」
「リヴァイのことだよ」
ボーイッシュだが、美しい顔立ちのナナバが口を開いた。
調査兵団では古株で、リヴァイとほぼ同じ頃の入団だと聞いたことがある。
「君とリヴァイが恋人関係にあることは知ってる」
「・・・・・・・・・・・・」
押し黙ったサクラに、ナナバは口元に笑みを浮かべた。
一見すれば冷たさすら感じる美人だが、意外にもその微笑みは優しい。
「安心していい。君達の間を知っているのは、一部の幹部だけだから」
ナナバが言うのは、エルヴィン、ハンジ、ミケ、そして自分達ということだろう。
別にリヴァイとの仲を隠しているわけではないが、兵士長と下級兵士とでは釣り合いが取れない。
心のどこかで“知られたくない”という気持ちがあった。