【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
叩かれたことで切れてしまったリヴァイの唇から、一筋の血が流れる。
その鮮やかな赤を見た瞬間、それまでサクラの頭の中を覆っていた霧が晴れていった。
ボンヤリとしか把握できていなかった姿が、はっきりと浮かび上がっていく。
「リ・・・ヴァイ・・・兵長・・・?」
ずっと心の中に闇が広がっていて気がつかなかった。
目の前にいる男はリヴァイだったのか。
自分は彼の頬を叩き、ケガをさせてしまったのか。
「リヴァイ兵長・・・! ああ、すみませんっ・・・」
なんて事をしてしまったのか。
慌てて切れた唇から流れる血を拭こうとしたサクラの手を、リヴァイはやんわりと制止した。
そして、逆に涙を浮かべている目尻を撫でてやる。
「謝るんじゃねぇ・・・遠慮せず、もっとやれ」
「へ・・・?」
「俺に怒りをぶつけろ。なんなら顔面を殴ってもいい・・・歯の2、3本ぐらいはくれてやる」
サクラ・・・
お前の腹の中で渦巻いている怒りを、全部俺にぶつけろ。
それでお前の心が晴れるなら、お前が自分自身を傷つけるのをやめるなら・・・
俺がいくらでも受け止めてやる。
「さっき俺が言ったことはすべて本心だ。お前に対するこの気持ちは異常だと、自分でも思ってる」
「リヴァイ兵長・・・」
「俺はお前のためなら、この手が血で染まっても構わねぇ。それがたとえ、俺自身の血であってもな」
リヴァイは切なそうに顔を歪めると、サクラの唇に自分のそれを近づけた。
「お前が誰を好きでもいい・・・俺はお前を離さねぇし、俺からお前を奪おうとする奴は殺す」
そして、ゆっくりと唇を重ねる。
リヴァイの血液がふわりとサクラの口の中に広がっていく。
猟奇的なまでに優しい味だった。