【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「サクラ!」
夜の森に、リヴァイの声がこだまする。
手提げランプでは光が小さすぎて、5メートル先を照らすのがやっとだ。
クソ・・・もう少し視界が開けていれば・・・
わずか数十センチの間隔で生えている木々が恨めしい。
昔は緑豊かな古城として観光名所だったのだろうが、今のリヴァイにとっては忌々しい障害物でしかなかった。
足を引きずっているはずだ、そう遠くに行けるわけがない。
そもそも調査兵団に何も報告・・・いや・・・俺に何も告げず、どこへ行こうとしているんだ。
「あの野郎、こんなに心配かけやがって・・・見つけたらただじゃおかねぇ」
サクラは“他人”の罪や過ちならば、すべて許すことができる。
だが、“自分”が犯した罪や過ちは・・・どのようにして向き合うのだろうか。
「・・・・・・・・・・・・」
どんなに考えても分からなかった。
ただ、どうしようもなく嫌な予感がする。
「サクラ・・・妙なことを考えるなよ」
俺が行くまで、とにかく大人しくしてろ。
お前が今抱えている感情をどう処理すればいいか、俺も一緒に考えてやる。
だから・・・頼む・・・
「間違っても、自分を傷つけるんじゃねぇぞ」
しばらく進むと道が少し開け、三叉路となっていることが分かった。
その時、リヴァイの瞳が大きく開く。
右側の道に、自然に折れたものではない枝が落ちていた。
すぐそばには白い包帯もある。
間違いない、アキレス腱を切ったサクラの右足に添えられていたものだ。
「・・・・・・・・・・・・」
包帯を拾い上げると、泥に混じって血が滲んでいた。
「サクラ・・・!」
灯りも持たず、裸足を引きずりながら歩く姿が目に浮かぶ。
木にぶつかり、尖った石を踏み、意識も朦朧としているだろう。
リヴァイは苦痛な表情を浮かべ、暗闇の向こうを睨んだ。