【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
見張り番の灯りが遠くに見える以外は、一切の光がない。
古城の周りは森に囲まれていて、真っ直ぐ歩くことができなかった。
だけど、それが今のサクラにとっては好都合。
すぐに闇の中に身を隠すことができたし、木に掴まりながら歩くことができた。
どうやって死のう。
首を吊るか・・・?
いや、それとも湖に身を投げるか。
剣を持ってくれば良かった。
「いや・・・何を考えているんだ」
命を断つ方法を自分で選ぶなんて間違ってる。
ルドルフはどのようにして逝った?
理想とする死に方をさせてもらえず、無残にも二つに噛みちぎられて死んでいったではないか。
「私も巨人に喰われよう・・・」
それが私に相応しい、もっとも醜い死に方だ。
細かい肉片になるまで噛み砕かれ、消化器官のない巨人の嘔吐物となり果てる。
ああ、想像するだけで笑える。
サクラの口元に、氷のような笑みが浮かんだ。
お前は未熟なくせに他人を死に追いやった。
死をもって、それを償わなければならない。
嬉しいだろう?
この怒りから、この罪悪感から、この嫌悪感から、逃げることができるのだから。
最低の、卑怯者め。
「ふふふ・・・」
肋骨が肺に突き刺さるように痛い。
右足はもう感覚がなく、まるでふくらはぎから下が切り落とされたみたいだ。
だけど、この昂揚感はなんだろう。
ずっと抑え込まれていた感情が今、堰を切ったように溢れてくる。
私はもっと早く殺しておくべきだったんだ。
朝がくれば、巨人たちは活動を始める。
それまでになるべく彼らのそばにいかなければ。
他の兵士に見つかる前に。
サクラの思考からは、エルヴィンやハンジはおろか、リヴァイさえもその存在が消されていた。
今はただ、自分をなるべく無残に殺してくれそうな巨人を探すことしか頭になかった。