【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
長い夢から目覚めると、そこは古城の一室だった。
「あたま・・・痛い・・・」
4年前に人間がこの地を放棄して以来、荒れたままになっている城。
調査兵団には絶好の野営地となっていた。
木箱を並べ、その上にシーツを敷いただけのベッドは硬く、少しでも動くと背骨が軋んだ。
私は生きてるのか・・・
“ ・・・サクラ・・・さん・・・ ”
なんで・・・
“ 俺を忘れないでください・・・ ”
なんで、ルドルフは死んで・・・
私は生きてるのか・・・
不注意だったから私は巨人に捕まった。
実力不足だったから巨人の手から逃れることができなかった。
身代わりになってくれたルドルフを助けることができなかった。
私のせいで彼が死んだ。
3年間厳しい訓練に耐えて、ようやく調査兵になれたというのに・・・
私がそれを無駄にしてしまった。
「・・・う・・・・・・」
心の中に、暗くて重いドロドロが広がっていく。
嫌悪感で居た堪れなくなる。
自分が醜く思えてならない。
自分が憎くてたまらない。
サクラはベッドから起き上がると、深呼吸を一つした。
肋骨が痛む。
折れてはいなそうだが、ヒビが入っているだろう。
しかし、その程度の痛みなど、ルドルフが今際の際に感じた痛みに比べればクソみたいなもの。
右足には添え木があてられているが、これは何故だ・・・?
サクラは意識を失う直前、ハンジにアンカーを右足に撃ち込まれたことを覚えていなかった。
「まぁ、いい・・・」
自分の体がどんな状態であろうと、関係ない。
今も心の底から湧き上がっている怒りが、サクラを闇の中に突き落とす。
幼い頃、お兄ちゃんを失った時と一緒だった。
死ぬことが償いになるとは思わない。
だが、生きていれば償えるとも思わない。
怒りで我を失うくらいなら、正気のまま自分でこの命を断ちたい。
そう思うことがすでに狂気であることに気づかないまま、サクラは右足を引きずりながら外へ出た。