【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「サクラを守ってくれて・・・ありがとな、ハンジ」
すると、ハンジは少しだけホッとしたような顔をした。
だけどすぐにまた暗い顔に戻る。
「それと・・・サクラの身代わりになって死んだ奴にも感謝しねぇとな・・・」
「ああ・・・ルドルフのことだね」
「あの金髪の野郎か・・・? よくサクラと一緒にいる所を見かけた」
「そうだよ。きっとサクラを女性として好きだったんだね・・・だから命を顧みず、彼女を助けた」
「そうか・・・」
ならば、なおのこと感謝しなければ。
ローゼに戻ったら、ハンジと一緒に慰問に行こう。
リヴァイはようやく、紅茶を一口啜った。
その様子を見ていて、何かを思ったのだろう。
「なぁ、リヴァイ・・・私がサクラと君を引き合わせた時に言った事を覚えている?」
「なんだ、突然?」
サクラと引き合わされたといえば・・・ヨアヒムとか名付けた巨人の実験の時か・・・?
「・・・・・・・・・・・・」
ハンジは窓の向こうに目をやった。
重苦しい夜の暗闇のせいで、なにも見ることはできない。
それでも、メガネの奥にある瞳には“何か”が映っているようだった。
「サクラは怒りや憎しみを持たない・・・」
その時、リヴァイの脳裏に浮かんだのは、捕らえた巨人に語りかけるサクラの姿。
罵声を浴びせることはせず、虚の心に触れようとしていた。
“ 驚くことに、あの子は母親を殺した巨人を恨んでいないんだ。しかも、弟を殺した駐屯兵も恨んでいない ”
なぜ、恨みも、憎みもしない?
それは、“自分”のせいではないから・・・?
“ 巨人も・・・人間も恨んでいない。なら、あの子の悲しみや怒りはどこに行ったんだろうね ”
リヴァイは顔を上げた。
同時に、ハンジも窓から目をそらし、リヴァイをじっと見つめる。