【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「ん・・・」
「サクラ! 大丈夫か、サクラ!」
血を失いすぎたのか、私は意識が遠のいていった。
「大変だ、イェーガー先生の所に連れて行こう! 先生ならきっと助けてくれる!」
私は、一命を取り留めた。
名医グリシャ・イェーガー先生の力もあった。
しかし、それ以上にきっと・・・
お兄ちゃんが助けてくれたんだと思う。
不思議とあれだけ深く切ったのに、私の体には一つの傷痕も残らなかった。
そして、10歳の誕生日を迎えた朝。
父が私を書斎に呼んだ。
「サクラ。お前は東洋人の血筋を示す、“刻印”を施さなければならない年齢に達した」
それは、お父さんの腕にも、お兄ちゃんの腕にもあったもの。
「しかし、私はお前にそれを継がせないことに決めた」
「え・・・?」
「どのような犠牲を払っても・・・たとえ先祖の意志に背くことだろうが、私はお前を護る方を選ぶ」
「東洋人であることは・・・いけないことなの?」
すると父は真剣な顔で首を横に振った。
「それは違う。ただ、少しばかり危険が増えるんだ」
優しく私の頭を撫でた。
「お前は東洋人として生きていくことはないが、どうかこの血を誇りに思って欲しい」
「・・・うん」
「だから今度、サクラに桜を見せてやろうと思う」
「桜?」
「我々、東洋人にとって特別な花だよ」
両親は、私に東洋人としての誇りを忘れさせないよう・・・
そして、
先祖たちに血を絶やすことの許しを請うため・・・
私に、あの美しい光景を見せてくれた。
ヒラ・・・ヒラ・・・
桜が舞う。
そして、私を夢から現実へと引き戻した。