【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
鈴なんてどこにも無いのに、どこから聞こえてきたんだろう?
ふと顔を上げると、微かに懐かしい声がした。
“ サクラ、大好きだよ ”
お兄ちゃん・・・?
お兄ちゃんなの?
“ ああ、そうだよ。俺のこと忘れちゃった? ”
そんな事、あるわけないでしょ!
私のこと、怒ってるよね。
“ 怒ってるわけないだろ。だけど一つだけ約束して欲しいことがある ”
なに?
“ お兄ちゃんのこと、忘れないで欲しいんだ。俺はずっとサクラのそばにいる ”
ほんと?
お嫁さんにしてくれる?
すると、お兄ちゃんの笑い声がした。
“ なに言ってるんだ。サクラはもう、本当にお嫁さんになるべき人と出会ったよ? ”
え?
誰のことを言っているの?
私、お兄ちゃん以上にステキな人と出会っていないよ。
“ そうだね、残念ながらその人もサクラも気づいていない。でも、その人はサクラを待っているよ ”
気づいていないのに、待っているの?
へんなの。
“ だから、サクラは俺の分も生きて、いっぱい幸せになるんだ。それが俺のためにもなるんだよ ”
どうして?
“ いずれまた出会うその人が、きっと俺の理想を形にしてくれるから ”
わかんないけど・・・
私が生きていれば、お兄ちゃんは嬉しいんだね?
じゃあ、私はその人ともう一度会えるように頑張る。
“ いい子だ、サクラ ”
その言葉を最後に、もうお兄ちゃんの声はしなくなった。
代わりに、墓石の前に勿忘草が咲いていることに気がつく。
『私を忘れないで』という意味を持つ青い花は、まるでその存在に気づいてもらえたことを喜んでいるかのように揺れていた。