【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「サクラ! 何をしてる!!」
父の叫ぶ声がしてそちらを振り返った。
「きゃあ!! サクラ、サクラ!!」
母が狂ったように私の名前を呼び続けた。
「お父さん・・・お母さん・・・見て・・・」
私、頑張ったよ。
こんなに汚い血が流れてる。
でも安心して。
私が死ねば、ちゃんときれいに戻る。
大好きなお父さんとお母さん。
悪い子で、本当に・・・
「ごめんなさい」
そう言って、ナイフを首筋に押し当てたその瞬間。
バシンッ!
頬が破裂したかと思うほどの痛みが襲う。
ナイフでつけた傷などとは比べものにならなかった。
「お・・・父さん・・・?」
見上げると、父の目には激しい怒りが浮かんでいた。
そして間髪入れずに、もう一度頬を殴られる。
「・・・っ痛!!」
父が暴力を振るうのは初めてだった。
「何をしているんだ、サクラ!!」
「・・・なにって・・・償わなきゃ・・・」
「償う? お前はいったいどんな罪を犯したというんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
父は、私と同じ目線になるように屈むと、血が流れている肩に触れた。
「私は・・・お兄ちゃんを殺した・・・死んで償わなきゃ・・・」
「何をバカなことを・・・弟を殺したのはお前ではない」
父はとても悲しそうに瞳を揺らした。
「弟を殺したのは、すべての人間だ」
父の手が血で染まっていく。
「この壁の中で、なんの疑問も持たずに生きている人間、疑問を持たせないようにしている人間・・・そして、疑問を持っているのに何もしない人間だ」
だってお父さん・・・お兄ちゃんがゴロツキに殺されたって信じていたじゃない。
ご近所のおじさんに聞かれた時も、そう答えていたじゃない。
「そんな彼らにとって、弟は都合が悪い存在だった。だから、殺されたんだ」
人間とは臆病な生き物だからね。
そのくせ、生きることに執着している。
“ 弟は、“人を変える”ために調査兵になることを選んだんだよ ”
ああ、今ならあの時のお父さんの言葉がよく理解できた。