【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
楽になる方法は一つだけ。
私は、ナイフを握りしめたままお兄ちゃんのお墓の前に行った。
とても小さな墓石。
刻まれた名前が、まだ新しい。
「お兄ちゃん」
そっと撫でると、冷たかった。
「ごめんね・・・」
ネックレスは取り戻せなかった。
お兄ちゃんの遺品も、すべて憲兵に没収されてしまった。
お父さんも、お母さんも、憲兵の言うことを信じてる。
お兄ちゃんを殺したのは、ゴロツキだって。
違うよね。
「お兄ちゃんを殺したのは、私だ」
お兄ちゃんがそうされたように、まずナイフを左肩に突き刺した。
「ッアア!!」
子どもの力では、刃先の数センチしか入らない。
それでも皮膚は裂け、柔らかい肉を抉った。
ボタボタと流れる血。
「痛いっ」
こんなに痛かったんだ・・・
お兄ちゃん、つらかったね・・・
ナイフを抜くと、ゴプッと音がして鮮血が飛び出る。
激痛で体が震えた。
しかし、痛ければ痛いほど、妙に頭が冴えていく。
「ごめんね、右肩はうまくできないや・・・」
左肩から流れる血が、足元に溜まっていく。
「う・・・」
意識を失う前に。
ちゃんと、死んでおかないと。
怖くはなかった。
むしろ、赤い血だまりができていくのが楽しくすらあった。
胸を埋め尽くしていた黒いドロドロが、少しずつ消えていく。
あぁ、やっぱりこれが正しいんだ。
今度は胸から十字を切るように、刃先を肉に食い込ませていく。
「ぐぅ・・・」
痛い。痛い。痛い。
でも・・・ドロドロが消えていく。
もうちょっとで死ねる。
こんな気持ち悪い自分は抹殺すべきだ。
最後は、死神から教えてもらったように首を切るため、ほとんど感覚がなくなった手でナイフを持ち直した時だった。