【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
お兄ちゃんの遺体を引き取ることができたのは、5日後のことだった。
憲兵の“調査”によると、お兄ちゃんは地下街で物取り目当てのゴロツキに殺されたという。
それを聞いた時、うそだと思った。
ゴロツキさんは怖い話し方だったけど、とても優しかった。
お兄ちゃんを殺したのは別の人間だ。
「サクラ、本当のことを教えてくれないか?」
あれは、王都から帰った次の日。
一度だけ父が私に聞いてきた。
「・・・・・・・・・・・」
私は何も答えることができなかった。
ただボンヤリと、心配そうに見つめてくる父の向こう側を眺めていた。
兵士だというのに隊葬はされず、まるで罪人のようにひっそりと共同墓地に入ったお兄ちゃん。
こんな目に遭わせたのは・・・
ぜんぶ、私なんだ。
「サクラ、胃が空になるのは良くないわ。これを飲みなさい」
声を無くしたかのように何も話せなくなった私に、母は毎日温かいミルクティーを淹れてくれた。
牛乳は高価だから、誕生日の時ぐらいしか飲んだことがなかったのに・・・
でも、とてもそんな気になれず、一口も飲むことができなかった。
「あなた・・・あの子、あれからほとんど何も口にしないのよ」
「弟が死んだ時、よほど怖い思いをしたのだろう・・・あの遺体の様子じゃ無理もない」
声を震わせる母を、父は優しく抱きしめていた。
しかし、その顔は怒りと深い悲しみが混じっていた。
大好きなお兄ちゃんを死なせただけじゃなく、父と母まで不幸にしている。
「・・・私のせいだ」
“ ガキはガキらしく、ピーピー泣いてりゃいい。誰も咎めたりしねぇ ”
ゴロツキさんの声がした。
あんなに優しい人なのに、お兄ちゃんを殺した犯人にされている。
「・・・ぜんぶ、私のせいだ」
“ ああ、お前のせいだ ”
ゴロツキさんに殺された憲兵の声がした。