【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「おい」
俯いていると、顔を掴んで上を向かせられた。
「ガキのくせに泣かねぇのか?」
「・・・泣く・・・?」
「あの頭を吹っ飛ばされたヤツ・・・お前の兄貴かなんかなんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
すると、ゴロツキさんは突然私を抱きしめた。
「ガキはガキらしく、ピーピー泣いてりゃいい。誰も咎めたりしねぇ」
その腕はとても優しくて。
「だが、俺の服は汚すなよ」
その声もとても優しくて。
涙が溢れてきた。
でも、同時に心の中が真っ黒になっていく。
「うっ・・・うっ・・・・」
お兄ちゃん・・・ごめんなさい・・・
私のせいだ・・・
見ず知らずの人の胸で、私は泣いた。
そのせいか、気持ちは重くなる一方だった。
涙を出せば出すほど、心の奥底から真っ黒のドロドロがこみ上げてくる。
どれくらいそうしていただろう。
その人は私の顔をハンカチで拭くと、お祭り騒ぎが続いている大通りへと連れて行った。
「あそこにいる憲兵に名前と住んでる場所を言え。心配するな、さっきの憲兵とは“違う”ヤツらだ」
「・・・お兄さんは?」
「俺は兵士ってもんと相性が悪い。一緒に行ってやれねぇが、できるな?」
有無を言わさない威圧感。
でも私を気遣ってくれていることはわかった。
「・・・・・・」
頷いた私を見て、その人はふと優しい目をした。
「よし。じゃあ行け」
背中をポンと叩かれ、憲兵の方へ歩く。
途中振り返ると、その人の姿はすでに消えていた。
命を助けてもらったのに、名前を聞くのを忘れた。
「ゴロツキのお兄さん・・・」
別に助けてもらわなくても良かったのに。
心の中が真っ黒のドロドロで重い・・・
お兄ちゃん・・・
ごめんなさい・・・・・・
その後、私は迷子として憲兵に保護され、駆け付けた父と一緒に家へ帰った。