【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「来い」
その人は私の手を引いて、歩き始めた。
地下の暗い道を慣れた様子で進む。
途中、浮浪者がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「おいおい、とうとう幼女にまで手を出すようになったか?」
「殺されてぇか?」
その人がフードの下から冷酷な瞳で睨むと、浮浪者は大げさに手を振った。
「いやいや、悪かった。お前に喧嘩を売って生き延びた人間はいねぇからな」
「・・・・・・・・・・・・」
強い人・・・なのだろうか。
そんなに大男には見えないけれど・・・
その人は横道に入ると、地上へと続く階段を昇った。
「ちっ・・・」
急に差し込んだ太陽の光が眩しかったのか、眉をしかめる。
顔はあまり見えなかったが、年齢はお兄ちゃんより少し若そうだった。
そして、お兄ちゃんにそっくりな黒髪をしていた。
鋭い目つきだけど、何故だろう・・・どこか儚さを感じる。
地上に上がると、その人は脇にあった商店に入り、子ども用の服を鷲掴みにした。
「オイ、どれがいい? 好きなのを選べ」
「・・・・・・・・・・・・」
そんなことを急に言われても困る。
動かずにいたのでイライラしたのか、私の代わりに適当な服と下着を掴んで店を出た。
「お金・・・払わなくていいの・・・?」
「あ? 俺はゴロツキだぞ、金なんぞ払うか」
「ゴロツキ・・・」
ってなんだろう・・・?
お金を払わなくてもいいお仕事なのかな・・・?
その人は私を建物の陰に連れて行くと、洋服を着替えるように促した。
渡された下着は男の子用だったし、服もぶかぶかだったけど・・・
温かかった。
「済んだか?」
「・・・・・・はい・・・」
「まったく似合ってねぇが・・・まあ、ションベン臭ぇよりかはマシだろ」
この人は、いったいなんなんだろう。
赤の他人の私に、どうしてこんなに優しいんだろう。
これが、ゴロツキという人なのか。
私はお兄ちゃんを殺した悪い子なのに・・・