【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「お前が“お兄ちゃん”を死に追いやった。死をもって償わなきゃな」
「・・・うぅ・・・」
私がお兄ちゃんを死なせた。
私がお兄ちゃんを・・・コロシタ・・・
体から力が抜けていく。
心臓が冷たくなった。
額に銃口が押し当てられた、その瞬間。
「ガキを殺すのは良い趣味とは言えねぇな・・・死んどくか?」
静かで氷のような声がしたかと思うと、憲兵の後頭部から血が吹き出した。
ズルリと私に銃を向けていた体が地面に沈む。
他の憲兵が何かを叫んだ。
しかし、彼らもまた、まともな言葉を発する前に大量の血が喉元から吹き出した。
「あ・・・あ・・・」
何が・・・起きているの・・・?
滲んだ視界に、フードを被った男の人が映る。
黒髪に、鋭い目をした人。
その手には、鮮血が滴る短刀が握りしめられていた。
「ちっ・・・汚ぇな・・・」
汚れを嫌ったのか、その人は短刀を憲兵の制服の裾で拭った。
そして、あらかた綺麗にすると私に目を向ける。
「おい、お前・・・」
反応しない事に苛立ったのか、その人は再び舌打ちをした。
「ガキのピーピー喚く声が聞こえると思って来てみれば・・・これはどういう状況だ・・・?」
しかし、子どもにそんな事を聞いても無駄だと考えたのだろう。
お兄ちゃんの死体をチラリと見て、ため息を吐いた。
「立て。ここにいたら、そのうち憲兵どもがやってくる」
「・・・・・・・・・・・・」
強引に腕を引っ張られたが、さっき憲兵にされた時とは違って痛くなかった。
「・・・汚ぇな。服がベトベトじゃねぇか・・・オイ、ションベンまで漏らしてるのか」
その時、初めて気がついた。
憲兵に連行された時か、お兄ちゃんが殺された時か、銃口を突きつけられた時か、いつだったか分からないが失禁していた。