【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
連れて行かれた先は憲兵団の施設ではなく、王都の地下だった。
そこは地上と違って浮浪者しかいない、不法地帯。
人が殺されても問題にはならない場所だ。
憲兵は下水の水が滴る壁に、お兄ちゃんを押し付けた。
「ブルーム、貴様が壁外調査のたびにコソコソと嗅ぎ回っていたのは知っている」
「・・・・・・・・・・・・」
「クッ・・・私は調査兵です・・・ッ・・・壁外を調査して何が問題なのでしょうか・・・!」
首元を締め付けられ、お兄ちゃんは苦しみに喘いでいた。
「貴様の姪とかいうガキのつけているペンダント・・・あれは外から持ち込んだものだな?」
「・・・・・・・・・・・・」
「質問に答えろ!」
「・・・ッ!!」
苛立った憲兵は、お兄ちゃんの右肩にナイフを突き刺した。
「お兄ちゃん!」
ボタボタと流れる血。
「貴様、“どこまで”知っている」
「・・・・・・・・・・・・」
「答えろと言っている!」
「ぐあ!」
今度は左肩にナイフが刺さった。
顔が青ざめていく。
このままじゃ・・・死んじゃう。
「お兄ちゃんは、人を変えたいって思っているだけだよ! お願い、もうやめて!」
子どもの叫び声が、薄暗い地下に響いた。
「変えたい・・・? この、安穏の世界をか?」
憲兵の顔色が変わる。
そして、手錠の鎖を引っ張って鬱血している手首を見た。
「そうか・・・貴様、東洋人か・・・」
それがなんの関係があるのだろう。
しかし憲兵の顔に、嫌悪と恐怖が入り混じった表情が浮かぶ。
「ブルーム。貴様は王政府に反逆の意志を持つ異端者として、この場で処刑する」
それはとても冷たい声だった。
同じ人間が発しているとはとても思えない。