【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
都は見たこともない数の人で溢れかえっていた。
「サクラ、僕の手をしっかりと握ってるんだよ」
人の波に流されそうになっている私に、お兄ちゃんは言った。
王の生誕を祝うためとはいえ、こんなに人が集まっているとは思わなかった。
頭につけていたリボンはいつの間にか無くなっていたし、スカートもグチャグチャだ。
それでも盛大な音楽、甘いお菓子、見たこともないオモチャを売っている露店など、面白いものがたくさんあった。
「楽しいかい、サクラ?」
「うん!」
王のことは顔も知らないが、こんな催しをしてくれるのだからきっと良い人だろう。
この氷を細かく砕いて甘い蜜をかけたお菓子も美味しい。
氷なんて高価なもの、シガンシナではなかなか手に入れることができない。
王都だからこそ食べられるお菓子だ。
低い塀の上に座りながら、お兄ちゃんが露店で弟への土産を買うのを待っていた時だった。
ドンッ!
後ろから誰かに押されて、地面に落ちた。
大した高さではないので膝を擦りむいた程度だったが、驚きと痛みで泣きそうになった。
「あ・・・」
そのままでは誰かに踏まれそうだったので立ち上がった瞬間、食べていた氷菓子が洋服にベットリとついていることに気がつく。
「ふ・・・」
とても大事にしていたブラウスだったのに・・・
「お兄ちゃん・・・痛い・・・」
拭いたら汚れは落ちるのかな・・・
胸元のボタンを外し、ハンカチで氷菓子の汚れを拭いている時だった。