【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
それから1か月ぐらいして、お兄ちゃんは私を王都に連れていってくれた。
ちょうど国王の誕生日祭を行っているらしい。
私はお気に入りの洋服を着て、髪を結い上げた。
父は仕事で、母は幼い弟とお留守番だった。
「ねぇ、このペンダントをつけて行ってもいい?」
出がけに私が見せたペンダントに、お兄ちゃんと母は複雑な顔をした。
それは、前に見せてくれた知らない文字が刻まれた銀貨に鎖をつけたもの。
あまりに私が興味を示すので、お兄ちゃんがプレゼントしてくれた。
「それはだめだよ、サクラ」
「どうして?」
「それは・・・失くしたら大変だからね」
「失くさないよ」
どうしてもダメなのかと泣きそうになった私を、お兄ちゃんは困ったように見つめていた。
しかし諦めたのか、ペンダントを手に取ると私の首にかけ、銀貨の部分を胸元にしまった。
「約束だ。このペンダントはこうして洋服の中にしまっておく。いいね?」
「・・・うん」
せっかく、この赤いリボンに合うと思ったのに・・・
でも、約束なら仕方ない。
「だいじょうぶかしら?」
母がお兄ちゃんに心配そうに尋ねた。
「憲兵に見つからなければ平気だよ」
「・・・そう・・・」
お兄ちゃんは宥めるように、母に笑顔を見せた。
しかし、平気ではなかった。
私はあのペンダントをつけて王都に行くべきではなかったんだ。