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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第3章 Seize the Light



「・・・ブルーム」

それはとても静かな声だった。

「俺が、左側に突破口を作る。お前は右からくる巨人達をも引き連れて行くつもりで森を目指せ。現時点で、それしか可能性がない」

「ハインツさん・・・!」

腹を決め、進行方向から左へと逸れていくハインツ。
一番近い援護班でも50メートルは距離がある。
その上、3人がかりで巨人1体に苦戦しているようだった。

駄目だ・・・
ここは私達だけで乗り切らなければ・・・

「ハインツさん、」


どうか、ご武運を・・・!


サクラの最後の言葉は、ハインツには届かなかった。


「うわぁぁァァ!」


雄叫びよりも悲鳴のそれに近い声をあげ、奇行種へと突進していく。
立体機動装置を発動させ、アンカーを太い足首に刺した。
まずは、腱を切断して動きを止めるつもりなのだろう。
馬から飛び降り、足首に目掛けて切りつけようとした瞬間だった。

突然、奇行種はしゃがみ込んで地面に這いつくばるような姿勢を取ると、大きな顔をハインツに向かって突き出した。

気味の悪い笑みを浮かべ、待っていましたとばかりに口を開ける。

「ハインツさん!!!」

バキッという音がしたかと思うと、右半分の顔だけを食われたハインツが恐怖の表情を浮かべながら、かろうじて残った左側の唇をひくつかせていた。

奇行種はしばらくしゃがんだまま、体を前後左右に振っている。
何が嬉しいのか、両手で握りこぶしを作り地面を叩いた。

「あ・・・」

辺り一面は酷い砂埃。

馬が蹴り上げる砂、
巨人が蹴り上げる砂、
人間が這いつくばって巻き上げる砂

呼吸をするのも辛い。

もう方向が分からない。
ただ、追いかけてくる巨人に捕まらないようシェリーを走らせているだけだ。

西に向かっているのか、東に向かっているのか、北に戻っているのか・・・

視界が晴れなければ・・・

終わりだ。
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