【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第1章 Never Despair
「私は調査兵団に入る。巨人に怯えず、安心して暮らせる時代の礎となる」
憲兵じゃだめだ。
内側ばかり守るだけでは、何も変えられない。
駐屯兵でもだめだ。
壁内で巨人と戦っても犠牲を増やすだけ。
「分かったよ、サクラ。あんたは立体機動が誰よりもうまかったから、逃げ足だけは速いと信じてる」
「一撃離脱、基本だよね」
「本当・・・死なないでよ、サクラ」
「私は死なないよ。ただ、この心臓を人類に捧げるだけ。ううん、団長にね」
あの演説を聞いた日から、サクラはエルヴィン・スミスを心から尊敬するようになっていた。
調査兵団第13代団長。
その人は、人類を守るために大勢の命を犠牲にすることも厭わない、冷徹な人間。
でも、犠牲にする命の中には、エルヴィン自身の命も含まれている。
あの人こそ、人類に必要な存在。
自分の命を捧げ、あの人の手足となる。
少しでも、あの人の命を賭さなくてもいいように。
「ここで、お別れだね」
ロゼとサクラは調査兵団の兵舎の前で立ち止まった。
この後、ロゼは憲兵団と合流するためにウォール・シーナへ向かう。
サクラは最も危険な兵団への入団式に向かう。
二人は向き合い、心臓に拳を当てて敬礼をした。
もう二度と会えないかもしれない。
親友との別れも、兵士の定めなのだ。
去って行くロゼの後ろ姿を見つめ、サクラは静かに唇を噛んだ。