【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「サクラさん・・・?」
呆然としていると、ルドルフが困ったように顔を覗き込んできた。
「ん・・・ああ、ごめんなさい」
「いえ、謝るのは俺の方です。壁外調査の前に変なことを言ってしまってすいません」
そう言って、申し訳なさそうに頭を下げる。
違う、ルドルフのせいじゃない。
得体の知れない恐怖が襲ったからだ。
壁外に行くのが怖いのか・・・?
分からない・・・
リヴァイ兵長・・・
そばにいて欲しい。
あの腕に抱きしめられたら、あの瞳に見つめられたら、
きっと安心できるのに・・・
そう願っても、リヴァイは団長を護衛する大事な役目がある。
野営地に入るまでは顔を合わせることもないだろう。
隊列の前方にいるだろう、小柄だが圧倒的な強さを誇る兵士長を想った。
しっかりしなければ。
私には作戦の遂行と、新兵を守る義務がある。
深呼吸をひとつして、気持ちを落ち着かせた。
「ルドルフ、もうすぐ時間だから配置につこう」
なんとか不安を振り払い、にこりと微笑む。
すると、ルドルフの表情も変化した。
「・・・サクラさんの笑顔を見ると、安心します」
その口元に笑みが浮かんでいるのを見て、サクラも少し安堵した。
そう、先輩である自分がしっかりしなければ。
二人が馬に跨った瞬間。
前方から叫び声が聞こえてきた。
「総員、出立準備!」
ああ、何度経験しても、この瞬間だけは逃げ出したい気持ちになる。
「開門始め!!」
トロスト区に鳴り響く自由の鐘。
「第48回壁外調査を開始する! 前進せよ!!」
合図とともに、サクラは馬を走らせた。
その先には、自身を狂気という名の闇に突き落とす、悲しい運命が待っていることも知らずに・・・