【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
壁外調査は規模がそれぞれ違うものの、一年に平均20回ほど行われる。
壁の外周辺を回るだけのものから、泊りがけのものもある。
今回は“遠征”に区分される、長距離移動と野営が伴う調査だ。
それだけ長い時間を壁外で過ごすわけだから、危険度も高くなる。
新兵にとっては、恐怖しか感じられないだろう。
なぜ、そんな彼の話を聞いてやらなかったのだろう。
約束の時間に少し遅れようが、紅茶が冷めていようが、リヴァイはそれを咎める人ではないのに。
今でも遅くはないだろうか。
「ルドルフ、昨日私に話がありそうだったけど・・・」
「あ、今はそのことは忘れてください」
ルドルフはサクラの前に立つと 、僅かに顔を赤らめた。
「でも・・・」
「うん?」
「ちょっと失礼します」
そう言うや否や、サクラの手を取って握りしめる。
「ル、ルドルフ?」
「すみません、でも少しだけ」
まさか手を握られるとは思っていなかったので、サクラは戸惑いながらルドルフを見上げた。
そばにいたハンジはそんな二人を交互に見ると、素早く周囲を見渡して兵士長の姿がない事を確認する。
そして、何も言わずに背を向けた。
「サクラさん・・・俺、貴方に伝えたいことがあります」
「伝えたいこと?」
「本当は昨日、それを言うつもりでしたけど・・・」
サクラの肌の柔らかさを感じながら、ルドルフは苦しそうに微笑む。
「この壁外調査から生きて戻って、一人前の調査兵になってから伝えることにしました」
「ルドルフ・・・」
なんて熱い手・・・
ルドルフの体温が伝わってくる。
「だから、その・・・どうかサクラさんも死なないでください」
「・・・・・・・・・・・・・」
「じゃないと、俺の想いの行き場が無くなってしまいますから」
最後にグッと力が込められ、ルドルフはサクラの手を解放した。
「あ・・・」
その瞬間、なぜか涙が出そうになる。
“ 死なない ”と、もう少しで約束してしまいそうになった。
リヴァイにすらその言葉を口にするのを避けているというのに。
「なんで・・・」
胸が・・・痛い。
何故、こんな気持ちになる?
今朝の夢といい、何かが起きそうで怖い。