【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「サクラ!」
出立の10分前。
トロスト区前門で、興奮気味のハンジが配置場所にやってきた。
「分隊長、今日は宜しくお願いします」
「こちらこそよろしく! 捕獲までの手筈は分かっている?」
「はい、私とルドルフで分隊長が用意している捕獲網に巨人を追い込む」
いつもながらの、いたって単純な作戦。
だが、それを遂行するには相当の勇気と覚悟が必要になる。
ルドルフとは、サクラの後輩の一人だった。
エルヴィンのような金髪に、エレンを彷彿とさせる真っ直ぐな瞳が印象的な青年。
そのせいか、サクラは新兵達の中でも特にルドルフを気にかけていた。
その彼にとって、今日は初陣。
「ルドルフも、頼んだよ!」
ハンジに肩を叩かれ、それまで顔を強張らせていたルドルフはなんとか顔に笑みを浮かべた。
「命にかえても、巨人捕獲作戦を成功させます」
「おいおい、命が危うくなったら自分の判断で作戦を中止させていいんだからね」
「は、はあ・・・」
ルドルフは酷く緊張しているようだった。
昨晩も眠れなかったのか、目の下にクマができている。
そういえば、リヴァイの部屋に行く前に呼び止められたっけ。
暗い廊下で思いつめたような顔をしていた。
“ サクラさん、少しお話できますか? ”
“ 話? ”
その時、サクラはリヴァイのために淹れた紅茶を持っていた。
それに一刻も早く彼に会いたかった。
“ ごめん、これから約束があるの。明日でいいかな? ”
“ そうですか・・・いえ、大したことではないので気にしないでください ”
あの時の心底がっかりしたような表情が忘れられない。
ルドルフは人生で初めて壁外に出るんだ。
自分もかつてそうだったように、とてつもない恐怖と戦っていたのかもしれない。