【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第13章 Forget Me Not ※
「リヴァイ兵長」
サクラは両腕を伸ばしてリヴァイを求めた。
筋肉で覆われた腕に抱きしめられながら、唇を重ねる。
死への恐怖はない。
兵士として命を捧げることこそ本望。
それでも・・・この人と離れたくない。
持ってはいけない欲が、覚悟を鈍らせる。
「兵長こそ・・・死なないでください」
貴方を失うことだけは耐えられない。
自分は死ぬ覚悟を決められても、それだけは絶対に。
すると、三白眼が揺れた。
「誰に向かって言ってる。俺が巨人に殺されるとでも思うのか?」
サクラは笑った。
当然といえば、当然だ。
リヴァイが巨人に屈服する姿など、まして餌食となる姿など、想像もつかない。
“死なない”とは言わないサクラ。
“死ぬ”とは言わないリヴァイ。
それが二人の強さだった。
死を恐れないサクラと、死を寄せ付けないリヴァイ。
調査兵団の団長であるエルヴィンは、この二人を鷲に例える。
鷲は、太陽を凝視しても目を痛めることのない唯一の生き物。
運命を左右する自然の脅威から逃げることも、怖れることもしない。
そして、広げた翼は稲妻の屈曲線を彷彿とさせ、自由に大空を飛び回る。
その鋭い鉤爪は、あらゆる命を奪い去る。
強さ、勇気、不死の象徴であり、太陽の化身。
サクラが鷲の目と心を持っているなら、
リヴァイは鷲の翼と鉤爪を持っていた。
両極端にいるから、惹かれ合う。
「サクラ、まだ時間がある」
集合まで、あと数時間。
「もう少し寝てろ。変な夢を見ねぇよう、抱いててやる」
互いの心臓の鼓動を確かめ合うように寄り添い、そして目を閉じた。