【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第3章 Seize the Light
あれが・・・7メートル級・・・?
恐怖のせいだろうか、もっと大きく見える。
まるで幼い子供のようなおぼつかない足取りなのに、想像以上の速さで走っている。
3年ぶりに顔を合わせる、人間を捕食する怪物だ。
すでに兵士を殺してきたのだろう、しまりのない口元に肉片がついていた。
「捕獲地点を目指すぞ!」
しかし、よく見ると巨人は目の焦点が定まっていない。
このままでは自分達を無視して左翼側へ行ってしまう!
「標的の注意を引きます!」
「ブルーム!!」
案の定、巨人はたった2人の誘導班よりも左翼側にいる大勢の兵士に気を取られている。
しかし彼らはすでに応戦中で、こいつを相手にする暇などないだろう。
サクラは煙弾銃を取り出すと、巨人の鼻先に向かって赤い煙弾を放った。
「私を見ろ、巨人!」
巨人は一瞬立ち止まると、首をギギギと捻ってサクラを見た。
なんと、無慈悲な顔をしているのだろう。
左手に握りしめているのは、兵士の下半身だろうか。
人間をいたずらに喰って悦に入っている。
今度はお前だ、と言わんばかりに右手をサクラの方へ伸ばしてきた。
「シェリー!!」
主の声に奮起したシェリーがすんでのところで巨人を躱し、森へと向かって走り始める。
それに合わせて、巨人も頭を左右に振りながら追いかけてきた。
「いいぞ、ブルーム!!俺が合図を出す!」
ハインツが青の信煙弾を放った。
これは、誘導開始の合図。
すぐに森から青と緑の狼煙が二本同時に上がった。
「分隊長だ!向こうも準備が整ったようだな!」
よし、これであとはこの巨人を捕獲地点まで誘き寄せるだけだ。
そこまで陣形が崩されなくて良かった。
「それにしても・・・お前、すごいな」
「・・・何がですか?」
「今日が初壁外なんだろ?よく、巨人と目を合わせることができたな」
「目を合わせたと言いますか、標的がこちらを見ていないことに気がついただけです」
だから、何もすごいことなんてない。
班長は何かを言いたそうに口を開きかけたが、言葉を飲み込んで笑った。
「お前は、ハンジ分隊長に負けず劣らずの変わった奴だな」
「褒め言葉として頂戴します」
目標地点まであと10キロメートル弱。
大丈夫、いける・・・
不覚にも安堵してしまったその時だった。