【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第11章 Hiss And Kiss ※
「わ、我ら、第二分隊に所属された者であります! リヴァイ兵士長にご挨拶したく、参りました」
「ほう、メガネの下についたのか。そりゃ災難だったな」
「いえ、それは、その・・・」
否定はできないのだろう。
訓練兵団の中で、ハンジは狂科学者として語られている。
しかしどれも尾ひれがついたくだらない噂だ。
リヴァイは二人の顔を交互に見ると、抑揚のない声で続けた。
「ま、もしお前らが死ぬとしたら、あいつの巻き添えを喰った時ぐらいだ。それはあいつのせいでもなんでもねぇ」
巻き添えを喰う方が悪い。
ハンジは、部下の命を危険にさらすようなことは絶対しない。
興奮すると自分の命をかえりみない無鉄砲さはあるが。
ハンジのことを語るリヴァイを見て、サクラは嬉しくなった。
なんだかんだ言っていても、本当は認めているんだ。
「なに、ニヤニヤしてやがる」
サクラの表情に気づき、リヴァイは照れ隠しのためか眉間にシワを寄せた。
そして手渡されたエルヴィンからの書類に目を落とす。
次の瞬間、突然足元にあったゴミ箱に捨ててしまった。
「兵長?!」
団長からの書類なのに、そんな扱いをするなんて!
慌てて駆け寄ると、リヴァイは忌々しそうにゴミ箱から書類をつまみ上げた。
そしてそばに来たサクラの鼻先に突きつける。
「お前・・・エルヴィンに何を言った?」
「え?」
それは書類でもなんでも無かった。
真っ白な紙に一言。
“親愛なる兵士長殿。ティータイムには茶菓子が必要だろう?”
「なっ・・・!」
「あの野郎・・・何を考えてやがる」
新兵達は何が起こったのか分からないといった顔をしている。
これ以上、変な空気を悟られるわけにはいかない。
「じ、じゃあ、私達はこれで下がります」
そそくさと出て行こうとした瞬間、リヴァイがサクラの手を掴んだ。
そして新兵に聞かれないよう、耳元で囁く。
「後で紅茶を持ってこい。茶菓子はいらん」
「は、はい・・・」
「ただし、今度は一人でな」
心臓がドキドキ鳴りすぎて、痛いほどだ。
本当は今すぐにでも二人きりになりたいところだが、後輩の手前、ここは我慢しなければ。
「わかりました、兵長」
ペトラに負けないくらい美味しい紅茶を淹れてきますね。
笑顔を見せると、リヴァイも優しい目をして頷いた。