【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第3章 Seize the Light
そして、壁外調査の日はやってきた。
張り詰めたような緊張感が調査兵団を襲う。
シェリーを落ち着かせるためにたてがみを梳かしていると、後ろから名前を呼ばれた。
「サクラ!」
「フリーダ!」
兵舎では何度か見かけたものの、なかなか話をする機会が無かった。
「誘導班なんでしょ?気をつけてね」
「フリーダは索敵の右翼前方だよね。どうか、巨人と遭遇しませんように」
「私は大丈夫。ナナバ班長の隣を走るし、何よりミケ分隊長がいるから」
それを聞いて、安心した。
ミケはもちろん、ナナバも冷静沈着で戦場慣れしている。
何かあれば、きっとフリーダを守ってくれるだろう。
「もうすぐ開門だから、私は配置に戻るね。サクラ、健闘を祈ってる」
「フリーダも」
そして、フリーダは右翼側へと戻って行った。
自分も準備しなくては。
シェリーの背中に飛び乗ると、ブルルッと体を震わせた。
「武者震い?大丈夫よ」
もうすっかりこの子とは打ち解けたと思う。
ほんの少しの表情の変化で、お互いに考えている事が分かるようになった。
コチ・・・コチ・・・
時計の針が進むにつれ、兵士の間から雑談の声が消えて行く。
馬の息遣いだけが目立つようになった。
あと5分・・・
あと4分・・・
ハンジとモブリットは最前列。
あと3分・・・
フリーダは右翼前方。
あと2分・・・
リヴァイ班は前列中央。
あと1分・・・
サクラは援護班の前、後列中央に控えてその時を待っていた。
そして、突如、勇ましい雄叫びで静寂が破られる。
「開門30秒前!これより人類はまた一歩前進する!!」
ゴクリと誰かが唾を飲み込んだ。
愛する人だろうか、女性の名前を唱えている者もいる。
「開門始め!!第35回壁外調査を開始する!!」
開門を知らせる鐘が鳴り響いた。
太陽の強い光が壁の向こうから差し込んでくる。
「前進せよ!!!」
サクラは、シェリーの手綱を強く引いた。
恐怖は無い。
人類はまた一歩前進し、反撃の糧を得るんだ。
サクラは腹の底から叫びながら、前進していた。