【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第10章 Come To Me, My Love
兵舎に着いた時は、すでに深夜1時を回っていた。
真っ暗な廊下に、リヴァイの靴音が響く。
足早に自分の部屋へと向かっていた。
ドアノブに手をかけると、鍵はかかっていない。
中に誰かがいる証拠だ。
ゆっくりと開けると、小さなランプの明かりが見えた。
しかし、物音はしない。
「・・・?」
中に入ると、テーブルに伏せているサクラの姿があった。
幼い顔をしながら、静かな寝息をたてている。
「寝るんだったら、ベッドで寝ればいいものを」
こんな所で寝ていたら風邪をひいてしまう。
「オイ・・・ベッドに・・・」
抱き起こそうとして、やめた。
あまりにもサクラが気持ち良さそうに寝ているから、下手に起こしたくない。
リヴァイはそっと音をたてないように上着を脱ぎ、クラバットを外した。
そしてサクラの向かいに座ると、その寝顔を眺める。
「安心しきった顔しやがって・・・襲うこともできねぇじゃねぇか」
あれだけ気持ちを昂らせながら急いで帰ってきたのに、一瞬にして全ての欲望が姿を消した。
今はいつまでも、この純粋な顔を見つめていたい。
「不思議な女だな・・・この俺が、こいつの笑顔のためならなんでもしたいと思うとは・・・」
ふと、ベッドサイドに置いてあるゼラニウムに目を向けた。
たまに思い出した時だけ、コップから水をやっている程度なのに相変わらず花が咲いている。
あの花のように、お前もずっと俺のそばにいろ。
指先でサクラの髪を撫でた。
「愛している・・・」
深く眠っているサクラに、そっと呟いた。